第2回 ウェビナーアンケートは、満足度を聞くためのものではない
ウェビナーが終わると、多くの企業が参加者アンケートを実施します。
「内容は参考になりましたか」 「講師の説明は分かりやすかったですか」 「今後、取り上げてほしいテーマを教えてください」
こうした質問は、ウェビナーの内容や運営を振り返るうえでは役立ちます。参加者の評価を把握し、次回のテーマや講演内容を改善するための材料になるからです。
しかし、ウェビナーを商談創出につなげたいのであれば、満足度を聞くだけでは十分ではありません。満足度が高いことと、参加者が具体的な業務課題を抱えていることは、同じではないからです。
「とても参考になった」と回答した人が、すぐに製品やサービスを検討しているとは限りません。反対に、満足度の回答は控えめでも、自社の課題と照らし合わせながら、真剣に内容を聞いていた人もいます。
ウェビナーアンケートに必要なのは、単なる評価ではありません。参加者がどのテーマに関心を持ち、現在どのような状態にあり、次にどのような接点を必要としているのかを判断するための情報です。
満足度が「5」でも、営業は動けない
ウェビナー終了後、アンケート結果と参加者リストを営業やインサイドセールスへ共有している企業は多いと思います。ところが、そこに書かれているのが、
・満足度は5段階で「5」
・内容は「大変参考になった」
・今後も同様のウェビナーを希望
といった情報だけだった場合、営業やインサイドセールスは次に何をすべきでしょうか。
参加者が何に困っているのかは分かりません。どの論点に強く反応したのか、社内ですでに検討が始まっているのか、それとも個人として情報を集めているだけなのかも判断できません。
結局、担当者はMAの行動履歴や過去の商談情報、企業属性などを改めて確認しながら、誰に連絡するか、何を話すかを考えることになります。アンケートの回答率が高くても、担当者が次の行動を決める材料がなければ、商談創出にはつながりません。
問題は、アンケートの回答が集まっていないことだけではありません。回答を次のアクションへ変換できないことにあります。
アンケートを「参加者の選別装置」にしない
商談化を意識しすぎると、アンケートを参加者の選別装置として設計してしまうことがあります。
「個別相談を希望しますか」 「導入時期はいつですか」 「予算は確保されていますか」
もちろん、こうした情報は有用です。ただし、「個別相談を希望する」と回答した人だけをフォロー対象にすると、多くの可能性を見落とします。BtoBの購買では、課題を感じた人が、すぐに個別相談を申し込むとは限りません。
「まだ問題をうまく整理できていない」「社内で誰に相談すべきか分からない」「売り込まれることへの警戒がある」「具体的な製品を比較する前に、まず事例や考え方を知りたい」
こうした段階にいる参加者が「個別相談を希望しない」と回答しても、それは関心が低いことを意味するとは限りません。重要なのは、参加者を「すぐに商談になる人」と「それ以外」に二分することではありません。参加者が今どの段階にいるのかを理解し、その状態に合った次の接点を用意することです。
アンケートは参加者を評価するためのものではなく、参加者にとって次に必要な支援を判断するためのものです。
最初に把握すべきは、参加者がどこに反応したか
一つのウェビナーの中でも、参加者が関心を持つポイントは異なります。
市場動向に関心を持つ人もいれば、具体的な業務プロセスに反応する人もいます。事例を知りたい人もいれば、自社の組織体制やデータ環境に問題意識を持つ人もいます。
したがって、ウェビナー全体の満足度だけでなく、どの論点に関心を持ったかを確認する必要があります。
例えば、ウェビナー商談化をテーマにしたセミナーであれば、次のような選択肢を用意できます。
質問:どの論点に関心を持ちましたか?
選択肢:
・ウェビナーの企画・ターゲット設計
・申込フォーム・アンケート設計
・参加者データの統合
・フォローの優先順位設計
・営業・インサイドセールス連携
・AIを活用したフォロー支援
・商談・受注貢献の可視化
この回答があれば、参加後に案内する情報を変えられます。
「参加者データの統合」に関心を持った人には、MAやSFAとの連携に関する資料を案内する。「営業・インサイドセールス連携」を選んだ人には、営業引き渡し条件やSLAの考え方を紹介する。「AIを活用したフォロー支援」に関心があれば、参加者情報の要約や推奨アクションの事例を案内する。全員へ同じメールを送るのではなく、参加者が反応した論点に沿って、次の接点を変えられるようになります。
「課題があるか」だけでなく、「現在どの状態か」を聞く
関心テーマが分かっても、それだけでは次の行動を決められません。同じテーマに関心を持っていても、参加者が置かれている状況は異なるからです。
「営業・インサイドセールス連携」に関心を持つ参加者でも、
・まだ課題として認識し始めた段階
・社内で改善方法を検討している段階
・関係部門と調整している段階
・具体的な施策や支援会社を探している段階
・すでに取り組んでいるが、改善に課題がある段階
では、適切な対応が変わります。
情報収集を始めた段階であれば、関連する資料や次回のウェビナーを案内することが適切かもしれません。社内で改善策を検討しているのであれば、事例や進め方を紹介できます。具体的な比較段階に入っていれば、課題整理のミーティングを提案できる可能性があります。
アンケートでは、「導入予定時期はいつですか」と聞くだけではなく、「現在の状況に最も近いものを選んでください」と聞く方が、参加者も回答しやすくなります。
参加者本人が予算や導入時期を決められない場合でも、自分たちが現在どの段階にいるかであれば回答できることが多いからです。フォロー側にとっても、その後の対応を判断しやすい情報になります。
自由記述は、「ご意見・ご感想」ではなく具体的な問いにする
アンケートに自由記述欄を設けても、具体的な回答がほとんど集まらないことがあります。
典型的なのが、「ご意見・ご感想をご自由にお書きください」という質問です。
範囲が広すぎるため、参加者は何を書けばよいか分かりません。その結果、「参考になりました」「ありがとうございました」といった回答が中心になります。参加者の課題を把握したいのであれば、問いを具体的にします。
例えば、次のような質問です。
・現在、最も改善したい業務やプロセスを教えてください
・本日の内容を自社で実践する際、障壁になりそうなことはありますか
・現在の取り組みで、うまくいっていない点があれば教えてください
・さらに詳しく知りたいテーマや事例を教えてください
こうした問いであれば、参加者も自社の状況を思い浮かべながら回答できます。営業やインサイドセールスが連絡する際にも、参加者自身が記入した内容を会話の起点にできます。
「アンケートで、営業への引き渡し条件が曖昧だと回答されていましたが、現在はどのように運用されていますか?」
このように始めれば、突然の製品説明ではなく、参加者が感じている課題に沿った自然な対話になります。
質問を増やせばよいわけではない
商談判断に必要な情報を集めようとすると、アンケートの質問数は増えがちです。課題、導入時期、予算、体制、役職、現在の利用状況、関心テーマ、相談希望。すべてを一度に聞こうとすれば、参加者の負担が大きくなり、回答率も下がります。
必要なのは、情報を網羅的に集めることではありません。次の行動を変えるために必要な情報だけを聞くことです。
設問を考える際には、一つひとつについて、次の問いを置きます。
この回答によって、その後の対応は変わるだろうか。
回答が異なっても、全員に同じメールを送り、同じ担当者が同じ内容で連絡するのであれば、その質問を設ける意味はあまりありません。
一方、回答によって、
・フォローする優先順位が変わる
・案内する資料が変わる
・対応する担当者が変わる
・Web会議へ誘導するかが変わる
・ナーチャリングのテーマが変わる
のであれば、取得する価値があります。
申込フォームやアンケートは、参加者の情報をできるだけ多く集めるためのものではありません。その後のプロセスを動かすための入力情報です。
設問を考える前に、回答後の動きを決めておく
商談創出につながるアンケートをつくるには、設問を考える前に、回答後の動きを設計しておく必要があります。
例えば、次のような対応です。
| 回答・状態 | 次のアクション |
|---|---|
| 具体的な課題があり、改善を検討している | 当日に課題確認の連絡 |
| 特定テーマへの関心が強い | 関連資料や事例を個別に案内 |
| 情報収集段階 | 関連コンテンツや次回ウェビナーを案内 |
| 過去に商談履歴がある | 過去の担当者へ共有し、状況を確認 |
| 自由記述に具体的な悩みがある | インサイドセールスが課題確認 |
| 個別相談を希望している | Web会議の日程調整へ進む |
ここまで決めておけば、アンケート回答は単なる集計結果ではなく、次の行動につながる情報になります。ただし、回答をそのまま営業やインサイドセールスへ渡すだけでは十分ではありません。フォローに必要なのは、回答の一覧ではなく、参加状況、企業属性、過去接点、商談履歴、MAの行動履歴などを組み合わせた解釈です。
例えば、
・関心テーマ:営業連携
・現在の状態:改善策を検討中
・自由記述:営業への引き渡し条件が曖昧
・過去接点:半年前に関連資料をダウンロード
・推奨アクション:当日に課題確認
・確認する内容:現在の営業引き渡し条件と運用状況
という形まで整理されていれば、担当者は複数のシステムを調べ直すことなく、参加者の文脈を理解して対応できます。
アンケートに回答しなかった人を、無関心と決めつけない
アンケート結果を見る際に注意したいのは、回答者だけをフォロー対象と考えないことです。回答しなかった人の中にも、関心の高い参加者がいる可能性があります。
終了後に別の予定があった。スマートフォンでは回答しにくかった。メールを見落とした。質問にどう答えるべきか迷った。回答がないことは、必ずしも関心がないことを意味しません。そのため、アンケートは参加状況、視聴時間、資料の閲覧、過去の行動履歴などと合わせて見る必要があります。
反対に、「個別相談を希望する」と回答していても、企業属性や記述内容、過去接点によっては、営業商談ではなく、別の情報提供が適切なこともあります。一つの回答だけで参加者を評価するのではなく、複数のシグナルから現在の状態を理解することが重要です。
アンケートを、次回のウェビナーを良くする学習データにする
商談創出を目的に設計したアンケートは、営業フォローだけでなく、次回の企画改善にも役立ちます。「どのテーマへの関心が高かったのか」「どの役職の人が、どの課題を選んだのか」「どの回答パターンがWeb会議につながったのか」「商談になった参加者は、どの設問にどう答えていたのか」「商談にならなかった理由は何だったのか」
こうした情報を継続的に分析すれば、商談につながりやすいテーマや対象者が見えてきます。「反応が高かった論点を次回は深掘りする」「特定の役職向けにテーマを絞る」「商談につながった課題を申込フォームへ反映する」「回答しにくかった設問を見直す」
アンケートは、開催後の評価票で終わるものではありません。企画、集客、フォローを改善するための学習データでもあるのです。
良いアンケートは、営業フォローを増やすものではない
ウェビナーアンケートを商談創出につなげると聞くと、営業対象者を見つけ、すぐに電話をかけるための仕組みだと思われるかもしれません。しかし、良いアンケートの目的は、電話する人数を増やすことではありません。参加者の状態を理解し、不要な連絡を減らし、必要な人に適切な接点をつくることです。
今すぐ課題を確認した方がよい人には、早く連絡する。まだ情報収集段階の人には、関連する資料や次回のウェビナーを案内する。具体的な悩みを書いた人には、その内容に沿って対話を始める。
一律に売り込むのではなく、参加者ごとに次の接点を変える。
そのためにアンケートがあります。ウェビナーアンケートは、満足度を聞いて終わる評価票ではありません。参加者の関心を、次の対話へ変えるための設計図なのです。
次回(第3回)は、アンケートや参加履歴から得られた情報を、営業やインサイドセールスへどのように渡すべきかを考えます。フォローに必要なのは、参加者リストや回答結果の一覧ではありません。営業に渡すべき「判断済みのアクション」と、優先順位や対応期限を設計する考え方を整理します。
ウェビナーコラムシリーズ
第1回 ウェビナーが商談につながらないのは、フォローが遅いからではない
第2回 ウェビナーアンケートは、満足度を聞くためのものではない
第3回 営業に渡すべきは、参加者リストではなく「判断済みのアクション」
第4回 最初のフォローのゴールは、「売り込み」ではなく「課題確認の場」をつくること
第5回 AIダッシュボードは「可視化ツール」ではない
第6回 ウェビナーを重ねても商談化率が上がらない会社に欠けているもの
取締役/執⾏役員
広富 克子
コンテンツマーケティング支援
神⼾⼤学経営学部卒業。住友ビジネスコンサルテイング株式会社⼊社。マーケティングリサーチ・コンサルティング業務を中⼼に活動し、その後AJS(オール⽇本スーパーマーケット協会)にて、プライベートブランドの商品開発・営業に従事。2003年10⽉、株式会社パワー・インタラクティブ⼊社。2006年4⽉、取締役執⾏役員に就任。全社営業戦略を統括する。


