マニュアル整備のススメ:Adobe Marketo Engage運用の業務マニュアルの重要性を再認識しよう
Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)の運用をおこなう上で、設定作業についてのマニュアルは整備できていますか?
Marketoは多機能で柔軟性が高い分、設定も複雑になりがちです。わずかな設定の違いで重大なトラブルに発展したり、成果の差につながるため、設定内容を正しく管理・共有することが重要です。
しかし、「大体理解しているから大丈夫」「都度確認すればいい」「手が回らない」といった理由で、マニュアル整備が後回しになっているケースも多く見受けられます。
本コラムでは、Marketo設定においての業務マニュアルの重要性にフォーカスし、そのメリットや作成のポイント、運用のコツを実践的な視点からご紹介します。
なぜMarketoに業務マニュアルが必要なのか
業務マニュアルは、企業や組織において業務を円滑に進めるための重要なツールです。
しかし、日々の業務に追われる中で、マニュアルの整備が後回しになっている企業も少なくありません。
マーケティングオートメーションツール(MAツール)である Marketo を導入している場合、その操作方法や設定ルールを記したマニュアルは必要不可欠です。
業務マニュアルが整備されていない場合、次のような課題が生じる可能性があります。
1.業務の属人化が進む
Marketoは機能が豊富な反面、設定や運用が複雑です。そのため、特定の担当者だけがツールの操作に習熟し、他のメンバーが十分に使いこなせないケースが多く見られます。
この属人化により、急な人員交替が発生した際にリード管理やキャンペーンの運用が停滞するリスクが高まります。
2. 引き継ぎの非効率化
Marketoのプログラム設定やキャンペーンフローは複雑な設定になりやすく、作成者以外が詳しい内容を把握するのが難しい場合があります。
明確なマニュアルがないと、設定の背景や目的の理解も困難になり、引き継ぎ時にも多くの時間を要し非効率が生じてしまいます。
3. ミスの発生によるチーム全体のパフォーマンス低下
操作方法が統一されていないことで、各メンバーが異なる方法でキャンペーンを実施したり、データ管理が煩雑化するケースもあります。
そういった要因から設定ミスも発生しやすくなり、結果としてチーム全体のパフォーマンスが低下するリスクがあります。
業務マニュアルがもたらす具体的な効果

Marketoの操作マニュアルを整備することで、組織全体の業務効率や成果にもたらす効果について考えてみます。
1.業務の標準化と属人化の解消
Marketoの操作マニュアルを活用することで、特定の担当者だけが知っている運用方法や設定手順をチーム全体で共有できるようになります。
たとえば、メールアセットの作成ルールやフォーム作成のルールを明文化することで、誰が作業をおこなっても同じ基準で正確に運用できる環境を構築できます。これにより、急な担当者変更があっても、業務がスムーズに引き継がれ、属人化のリスクが軽減します。
2. 設定ミスの減少と運用の安定化
Marketo操作マニュアルには手順のほかに、よくある設定ミスや注意点も記載しておくことで、操作ミスの未然に回避でき再発防止につながります。
また、操作方法とは別に発生したミスについては、原因と対策について都度ナレッジ化して蓄積しておくことにより、チーム全体で同じミスを繰り返さない仕組みをつくることが可能になります。
実際に起きたミスを元にマニュアルとナレッジの双方をアップデートしていくことで、運用の安定性がさらに強化されます。
さらに、操作手順の漏れや誤りを防ぐチェックリストを活用することも設定ミス防止に有効的です。
3.引き継ぎ・トレーニングの効率化
新たなメンバーがMarketoを担当する際、マニュアルがあることでトレーニングや引き継ぎを効率化できます。
特に、Marketoのような多機能ツールでは、プログラムの作成やスマートキャンペーンの条件設定やメール配信の要件設定など、操作が複雑な作業が多いです。具体的な手順をキャプチャ画像や図解で示したマニュアルが準備されていることで、新メンバーが短期間で業務を取得し、運用をスムーズに引き継ぐことが可能になります。
このように、業務マニュアルは単なる業務の補助ツールではなく、企業全体の成長と成功を支える重要な資産といえるでしょう。
関連記事:Adobe Marketo Engage用メールプログラム設定チェックシート ~配信事故を事前に防ぐメール配信前に必須のチェック項目~
優れた業務マニュアルの条件とは?
優れた業務マニュアルとはどんなものでしょうか。
マニュアル作成にあたっていくつかの共通する条件について考えてみましょう。
1.わかりやすい内容であること
誰が見ても容易に理解ができるような表現を使いましょう。マニュアルの内容が分かりにくいと、利用されなくなってしまいます。
Marketoをはじめとするマーケティングオートメーションツールでは、専門用語も多くあるため、略語や曖昧な表現を避けましょう。「〇〇の設定方法」や「△△の具体的な操作フロー」など、具体的でわかりやすい記述を心がけましょう。
また、フローチャートや図解、キャプチャ画像を活用することで、視覚的に情報を伝える工夫も効果的です。
2.信頼性があること
マニュアルには、操作手順をはじめ、日々発生するタスクが具体的に記載されていなければ意味がありません。業務の実践に基づいて作成し、現場の担当者へのヒアリングや確認をおこない、実際の作業内容を正確に反映させた信頼性が高いものであることが重要です。
また、業務のプロセス・フローや成果物の水準を統一させるため、マニュアルを活用することでプロジェクトのメンバーの誰もが一定レベルの業務を遂行できるように、正しい情報で共通認識を持てるツールにしましょう。
3.更新されていること
内容にアップデートが発生したり、プロセスが変更された場合には、マニュアルも速やかに改訂される必要があります。迅速に内容を更新し、現場での活用に対応できるようにしましょう。
マニュアルは、更新しやすいデジタル形式での管理が便利です。
クラウドベースのツールを使用すれば、従業員間でリアルタイムに情報を共有し、変更点を即座に反映できます。
また、標準的な業務に加えて、イレギュラーな業務対応の方法やトラブルシューティングの手順も含めることで、従業員が自信を持って業務を遂行できるようになります。
これにより、最新の状態のマニュアルを永続的に保持し続けることができ、人員交替が発生する場合でも同じレベルで業務を継続できるようになります。
これにより、従業員の業務効率も向上させ、組織全体の成長を支える強力なツールとなるでしょう。
実践!効果的なMarketo業務マニュアルの作り方
業務マニュアルを効果的に作成するためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
1.目的を定義する
まず、目的を明確にすることから始めましょう。
初めて操作する新人教育に向けたものなのか、作業効率化を目指した内容なのかを明確にすることで、マニュアルの方向性が決まります。
2.情報の整理整頓
次に、情報を整理するプロセスが重要です。
業務の流れを洗い出し、必要な手順や注意点をリストアップします。その際、過不足がないように現場の担当者へのヒアリングをおこない、実際の作業内容を正確に反映させましょう。
また、複数の担当者が異なる方法で行っている業務がある場合は、最も効率的で確実な方法を選定し、それを標準化させることが求められます。
3. 検索機能の付加
マニュアルは、わかりやすい形式でまとめることも大切です。
全体の流れ、プログラムの設定、メールアセットの設定、配信の設定、レポート機能の設定などカテゴリ分類を工夫して情報を整理し、見る人が迷わない構成を心がけましょう。
特にページ数が多い場合は、索引やナビゲーション機能を活用し、必要な情報がすぐに見つけられるようにします。
4. 見直しと改善
最後に、完成したマニュアルを現場で使用してみて、フィードバックをもとに改善を重ねることで、実用性と信頼性の高いマニュアルが完成します。
現場で使用した際に「この手順が抜けている」や「説明が不十分」といった指摘があれば、それを反映して速やかに修正をおこないましょう。
このサイクルを繰り返すことで、業務マニュアルはより現場に適したツールとして進化していきます。
業務マニュアルを活用したスキルアップ
業務マニュアルはスキルアップにも活用できます。
たとえば、新しいツールやプロセスを学ぶ際、マニュアルを活用すれば短時間で効率的に習得が可能です。さらに、業務マニュアルを作成する過程そのものが、気づきや再認識といったスキルアップの機会になります。作成者が業務の詳細を理解し、問題点を見つけて改善することで、業務知識や分析力が向上します。
また、業務マニュアルを活用したトレーニングを実施したり、Marketoの操作方法やマーケティングのベストプラクティスを学ぶ教材としても活用できるため、チーム全体のスキル向上にも有効です。
定期的に社内勉強会をおこなうなど、マニュアルを使用し、最新の業務プロセスやツールについてチーム全員が学べる機会を設けることで、リスキリングにもつながり、全体のスキルレベルを底上げすることができます。
さらに、業務マニュアルをもとにしたeラーニングの導入も効果的です。
動画やクイズ形式で学習を進めることで、従業員の理解度が高まり、記憶にも定着しやすくなります。このような継続的な取り組みを通じて、結果としてチームの生産性向上や、組織全体のスキルレベルの向上を図ることが可能です。これにより、ビジネス成果にも直結する運用が実現できるでしょう。
関連記事:あなたのMarketoスキルはどのレベル?今すぐ使えるスキルチェックシートで自身のMarketo習熟度を可視化してみよう
Marketo業務マニュアルの活用事例
業務マニュアルの重要性は、弊社のお客様の事例からも証明されています。
弊社のお客様の過去例では、前担当者の退職に伴い、業務マニュアルがなかったために、新担当者が着任するまでの期間の業務が中断してしまうリスクが発生しました。
まずは、弊社に運用代行サポートのご依頼をいただき、新担当者採用後にはMarketo操作のレクチャーからサポートし、短期間でMarketo運用の内製化へつなげることができました。
また、最終的には着手ができていなかったマニュアル作成も弊社にご依頼をいただき、支援をした実績があります。
マニュアルを作成した結果、ミス発生防止、引き継ぎや別の担当者への業務説明に要する時間が短縮され、組織体制の強化につながるというメリットも生まれます。
今後、業務マニュアルはデジタルツールと連携することで、さらなる進化を遂げるでしょう。クラウドベースのマニュアル管理ツールや、AIを活用した業務支援ツールがさらに普及すれば、必要な情報を瞬時に検索・共有できる環境が今以上に整います。
これにより、従業員は日々の業務においてより高いパフォーマンスを発揮できるようになるでしょう。
まとめ
Marketoに限らず、業務マニュアルの重要性を改めて認識し、整備しておくことは、企業の競争力を高める鍵となります。業務マニュアルは企業全体の成長を支える基盤であり、それをどのように改善し、活用していくかをチーム単位、企業単位で常に考えることが重要です。
一見すぐに対応できそうでありながら、後回しにされがちな作業ではありますが、いざという時にマニュアルが整備されていないと、業務のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす可能性があります。このような観点から、業務マニュアルを必要不可欠なツールとして再認識しましょう。
弊社では、MAツール活用支援の一環として操作マニュアルの作成支援もご提供しております。ぜひお気軽にご相談ください。

マーケティングコンサルタント
長島 小百合
マーケティングオートメーション活用支援
複数のIT系企業にてBtoBマーケティング業務に従事。
ユーザーとしてOracle Eloquaなどの国内外のマーケティングオートメーションツールに携わり自社マーケティング施策を実行。
2022年より現職、Adobe Marketo Engage オペレーション支援を担当。マーケティング部門での業務経験より、お客様と同じ視点でマーケティング活動をサポート。
溺愛中の愛犬が癒しの存在。