Adobe Marketo Engege 導入1年目のアクションプラン:運用基盤の整備と定着
パワー・インタラクティブ マーケティング推進室(文責)
Adobe Marketo Engage(以下、Marketo)導入1年目は、運用基盤の整備と定着が最優先の目標となります。 これは、単にツールを導入するだけでなく、マーケティング業務全体の標準化と効率化を進め、組織全体での運用をスムーズにすることが重要です。
Marketoは、リード管理、ナーチャリング、スコアリング、自動化など、多岐にわたる機能を備えています。しかし、導入初年度にすべての機能を活用しようとすると、運用が複雑になり、定着が難しくなる可能性があります。そのため、まずは基本的な運用ルールを確立し、「使える仕組み」として社内に根付かせることが鍵となります。
また、MA(マーケティングオートメーション)はマーケティング部門だけのものではなく、営業部門との連携があってこそ、最大の効果を発揮します。リードの管理方法、スコアリングの基準、営業へのリード引き渡しのプロセスを明確にし、部門間での共通認識を持つことで、スムーズな連携を実現することが可能になります。
Marketoの効果を最大化し、1年目から確実に運用を軌道に乗せるために、以下の3つのステップで進めるとスムーズに活用が進みます。
なお、Marketo導入からの3年間のロードマップは下記のコラムでそれぞれ解説しています。
Adobe Marketo Engege導入後3年間の活用戦略:成功のためのアクションプラン
Adobe Marketo Engage導入2年目のアクションプラン:マーケティング施策の高度化
Adobe Marketo Engage導入3年目のアクションプラン:高度な活用と組織全体への最適化
Marketoの基本機能を活用し、運用体制を確立する
Marketoを効果的に活用するために、運用ルールを整備し、標準オペレーションを確立します。
チーム内での役割分担を明確にし、再現性のある運用フローを構築することで、属人化を防ぎ、継続的な改善をおこなえる体制を整えます。
(1)運用体制を構築する
・Marketoの活用目的を明確にし、社内での合意を得る(例:リードナーチャリング強化、顧客エンゲージメント向上など)
・利用する機能範囲を決定し、実装・運用計画を策定(例:メール配信、スコアリング、フォーム管理、CRM連携など)
・トレーニングの実施や情報共有の仕組みを作り、スムーズな導入を推進
(2)MA運用チームの役割分担を明確化
・管理者:システム設定、アカウント管理、データ連携の管理
・コンテンツ作成者:メール、LP、フォーム、ホワイトペーパーなどのコンテンツ制作
・分析担当:KPIの設定、モニタリング、改善提案
・キャンペーン運用担当:シナリオ設計、ワークフロー構築、ABテスト実施
➡ 定期的なミーティングを設定し、各担当者の進捗や課題を共有しながら改善を図る
(3)運用マニュアルを作成し、属人化を防ぐ
・Marketoの基本設定や運用ルールをドキュメント化
・メール配信、リード管理、フォーム運用などの手順をスクリーンショット付きで説明
・障害対応やトラブルシューティングのプロセスを整理
➡ 新人や異動者でもスムーズに対応できるよう、定期的にマニュアルをアップデート
(4)KPIを設定し、モニタリングをおこなう
・主要KPIを定め、運用効果を測定
・メール配信の開封率、クリック率、コンバージョン率
・LPやフォームのCVR、直帰率
・スコアリングによるリードの進捗状況
・KPIの変動要因を分析し、ABテストなどで改善を継続
➡ ダッシュボードを作成し、データを可視化(例:Tableau、Google Data Studio、Marketoのレポート機能を活用)
(5)標準的なマーケティングキャンペーンを設計する
・ウェルカムメール(初回登録者向けのガイダンスメール)
・定期メルマガ(業界ニュース、導入事例、ウェビナー案内)
・ホワイトペーパー配布(ダウンロード後のフォローアップメール)
・スコアリングとセグメント設定(アクティブなリードに最適なコンテンツを提供)
➡ テンプレート化し、担当者がすぐに実施できるようにする
リードナーチャリングの仕組みを作る
リード(見込み顧客)と継続的な関係を築き、商談化の可能性を高めるための仕組みを整備します。適切なコンテンツを適切なタイミングで提供し、リードの関心を引き続けることで、マーケティング施策の成果を最大化します。
(1)フォーム・ランディングページ(LP)・メール配信の設計と運用
リード獲得の入り口となるフォーム・LPを整備し、獲得したリードに適切な情報を提供し続ける仕組みを作ります。
フォームの設計
・Marketoのフォーム機能を活用し、問い合わせや資料ダウンロードのリード情報を一元管理
・フォーム項目は必要最小限にしつつ、役職・業種・関心テーマなどの情報を取得
・マルチステップフォームやプログレッシブプロファイリングを活用し、リード情報を段階的に収集
LP(ランディングページ)の作成
・効果的なCTA(コールトゥアクション)を設置し、コンバージョン率を最大化
・ABテストを実施し、CTAボタンの文言・配置・デザインを最適化
・動画や導入事例などのコンテンツを活用し、リードのエンゲージメントを強化
メールキャンペーンの設計
・シナリオに沿ったメールキャンペーンを設計し、リードのフェーズごとに適切なコンテンツを提供
・例:
・ウェルカムメール(登録後すぐに送る導入ガイドやサービス概要の紹介)
・資料ダウンロード後のフォローアップ(活用方法の紹介や関連コンテンツの案内)
・イベント・ウェビナーのリマインドとフォロー(参加者の興味を深める内容を配信)
・休眠リード向けの再活性化メール(過去の接触履歴をもとに、関心を引き戻すコンテンツを提供)
➡ シナリオ設計時に、適切な配信間隔やトーンを決め、押し付けがましい印象を与えないようにする
(2)初歩的なスコアリング設定
リードの行動データをもとにスコアリングを行い、ホットリードを識別できる仕組みを構築します。
ユーザーの行動に応じたスコア付与
・メール開封:+5点
・メール内リンククリック:+10点
・LP閲覧:+15点
・資料ダウンロード:+20点
・ウェビナー参加:+30点
・フォーム送信:+50点
ネガティブスコアの設定(スコア減算)
・一定期間活動がない場合(例:90日間アクションなしで-10点)
・メールの開封やクリック率が極端に低い場合
➡ スコアのしきい値を設定し、一定スコアを超えたリードはMQL(営業に渡すリード)として扱う
(3)MQL(マーケティングが営業へ渡すリード)の基準を策定
営業が効率よくアプローチできるよう、適切なリードを渡す基準を明確にします。
MQLの定義
・スコアが80点以上(リードの関心が高いと判断できる)
・フォーム送信時に特定の業種・役職の情報が取得できている
・「資料ダウンロード」+「ウェビナー参加」など、複数のアクションを取ったリード
➡ 営業チームとすり合わせをおこない、リードの質を確認しながら基準を最適化していく
(4)リードナーチャリングのシナリオを作成
リードの関心を維持し、適切なタイミングで営業へつなげるためのシナリオを設計します。
ウェルカムメールの自動配信
・登録後すぐに送るメール(会社紹介、サービス説明、次のアクションの案内)
・1週間後にフォローアップ(関連資料や導入事例の紹介)
関心別のコンテンツ配信
・業界別(例:BtoB SaaS企業向け/メーカー向けの異なる事例紹介)
・興味別(例:リード獲得に課題がある人向け/データ分析を強化したい人向け)
セグメント別シナリオ
・既存リード向け:「過去に接点があったが商談化していないリード」への再アプローチ
・新規リード向け:「フォーム登録後のリード」に対する段階的な情報提供
・営業未対応リード向け:「スコアは高いが営業が未対応のリード」へインサイトを提供
➡ 定期的にシナリオの成果を分析し、開封率・クリック率・CVRを改善していく
まとめ
リードナーチャリングの仕組みを整えることで、見込み顧客との関係を強化し、商談化率を高めることができます。Marketoを活用しながら、スコアリング・コンテンツ配信・MQLの基準を継続的に最適化していきましょう!
営業とのデータ連携を強化する
マーケティングが獲得したリードを営業が適切にフォローし、商談化の可能性を高めるための仕組みを構築します。MarketoとCRM(Salesforceなど)を連携し、リアルタイムで情報を共有することで、営業チームが確度の高いリードに効率よくアプローチできる環境を整えます。
(1)CRM(Salesforceなど)とのデータ統合
Marketoで取得したリード情報をCRMと連携し、一元管理できる仕組みを構築します。
データ連携の設計
・リード情報の同期ルールを決める(例:登録直後にCRMへ同期 or スコアが一定値に達したら同期)
・CRM側で必要な項目を整理(例:会社名、担当者名、役職、関心分野、ナーチャリング状況)
・Marketo側で適切なリードソースを記録(例:「セミナー参加」「ホワイトペーパーDL」などの情報を営業に引き渡す)
・データの重複管理を強化(CRM上で重複登録を防ぐルールを設定)
リアルタイムでリード情報を営業に共有
・通知ルールを設定し、MQLになったリードを営業に自動通知(例:スコア80以上、特定アクションを実行)
・Slackやメールで営業へアラートを送信し、素早いフォローアップを促す
・営業ダッシュボードを作成し、ホットリードが可視化される環境を整備
➡ 営業が「どのリードを優先的に追うべきか」を迷わず判断できるようにする
(2)MQLの定義と営業連携プロセスの確立
営業に渡すリードの基準を明確にし、連携プロセスを標準化することで、適切なリードフォローを実現します。
MQL(Marketing Qualified Lead)の定義
・スコア80以上(メール開封、サイト訪問、資料DL、セミナー参加などを考慮)
・過去90日以内にアクティブな行動をしている
・特定の役職(例:マーケティング責任者、営業責任者など)
・特定の業種・企業規模(ターゲット企業かどうか)
営業へのリード引き渡しルール
・MQLになると営業へ自動通知(CRM上で「MQLステータス」に変更)
・営業が1週間以内にフォローすべきルールを設定(未対応リードが可視化される仕組み)
・対応状況のフィードバックを営業からもらうフローを確立
営業との定例ミーティングの実施
・週1回、マーケと営業で「MQLフォロー会議」を開催
・直近のMQLの状況を共有し、商談化したリードと未対応リードを確認
・営業側から「フォローしやすいリードの特徴」や「マーケに求める改善点」をヒアリング
➡ マーケティングと営業のスムーズな連携を維持し、リード対応の精度を高める。
(3)マーケティングと営業のコミュニケーションを強化
データの共有だけでなく、定期的な情報交換をおこない、よりスムーズな連携を目指します。
営業がリードのフォロー状況を把握できる環境を整備
・ダッシュボードを作成し、以下の情報を可視化
・直近1週間で発生したMQLの数
・営業がフォローしたリード数と未対応リード数
・リードのスコア推移と行動履歴(例:閲覧ページ、ダウンロードコンテンツ)
・商談化率・成約率のトレンド
営業向けにMarketoの基本機能やデータの見方をレクチャー
・Marketoのスコアリングの仕組み(どうやってリードがMQLになるのか)
・リードの行動データの活用方法(例:「このページを見た後にフォローすると反応が良い」などの傾向分析)
・CRM上のリードデータの見方と活用ポイント
営業とマーケティングの連携をより密にするための施策
・営業チームがナーチャリング施策にフィードバックできる場を設ける(例:「どのメールが反応が良いか?」などの意見交換)
・週次・月次レポートを作成し、リードの傾向や施策の成果を共有
・「営業に渡したリードのうち、商談化したリードの特徴」を振り返り、MQLの定義を適宜アップデート
➡ 営業とマーケの間で「リードの温度感」や「営業しやすいリードの特徴」を共有し、双方の成果を最大化する
まとめ
MarketoとCRMを活用し、マーケティングから営業へのリード連携を強化することで、商談化率を向上させます。
・リアルタイムでデータを共有し、営業がフォローしやすい環境を整備
・MQLの基準を明確化し、適切なリードを引き渡す仕組みを構築
・定期的な営業とのミーティングやダッシュボードを活用し、情報共有を強化
マーケティングと営業の連携を深めることで、より効率的なリード活用と売上向上を実現していきましょう。
よくある課題と解決策
課題 | 解決策 |
---|---|
社内の運用体制が不明確で、特定の担当者に依存している |
- 運用ルールをマニュアル化し、チームで共有することで属人化を防ぐ - MA運用チームの役割を明確化(例:管理者、コンテンツ作成者、分析担など) -定期的な研修やワークショップを実施し、スキルの標準化を進める |
営業との連携が不十分で、リードが適切に活用されない |
- MQLの基準を営業と協議し、どのリードを優先的にフォローすべきか明確にする - 定例ミーティングを設け、リードの質やフォロー状況を共有 - 営業チーム向けにMarketoのデータの活用方法をレクチャーし、リードの行動履歴を営業活動に活かせるようにする |
MarketoのデータとCRMのデータが統合されず、施策の効果が見えにくい |
- CRMとの連携を強化し、リード情報を一元管理する - Marketoのスコアリングや行動データをCRMに同期し、営業がリアルタイムで活用できるようにする - ダッシュボードを作成し、リードのコンバージョン率や商談化率を可視化する |
Marketo導入1年目を成功させるために
Marketoの導入・活用には、適切な戦略設計と運用ノウハウが不可欠です。
パワー・インタラクティブでは、Marketoの運用定着から高度な活用までをサポートするサービスを提供しています。
こんなお悩みがある方へ
・Marketoの基本機能をしっかり活用し、成果を出せるようにしたい
・リードナーチャリングの仕組みを作り、効率的なマーケティングを実現したい
・営業との連携を強化し、リードの商談化率を高めたい
・MarketoとCRMのデータ統合を進め、データ活用を最適化したい
パワー・インタラクティブのMarketo活用支援サービスでは、これらの課題を解決するための戦略設計・運用設計・データ連携のサポートを行っています。
Marketo活用を強化したい方は、ぜひご相談ください。
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